「ヒアアフター」はあの世を覗いて現在を生きていく映画


死後の世界をキーワードにして、現世の生き方に苦悩する3人の物語が交錯するストーリーです。二度見ることでその奥深さをより楽しるものの、実際はなかなか二度見る機会もないでしょうから、あえてあらすじに詳しく記してみました。

そのようなわけで、あらすじとはいえネタバレしつつラストまで記してあります。ご注意下さい。

あらすじ

(仏)フランスでニュースのアンカーとして有名なマリーは、プロデューサーの恋人ディディエと南国にバカンスに来ていたところ、津波に巻き込まれ九死に一生を得る。この時の臨死体験を境に、不思議な感覚にとらわれるようになったマリー。彼女はこれが死後の世界との繋がりではないかと考える。
(米)サンフランシスコに暮らすジョージは死後の世界と交信ができるが、自身はその力でロクな目に遭ってこなかったことから封印したがっている。しかし、兄のビリーはそんなジョージの苦悩を考えず、次々と周りの人物をジョージに引き合わせたり、その力を使った金儲けをしたいと考えていた。
(英)ロンドンで麻薬中毒の母親と暮らす双子の兄弟ジェイソンとマーカス。息子たちの愛情を感じた母親は麻薬を断とうと決心するが、その矢先にジェイソンが事故死してしまう。双子の兄の死に深いショックを受けるマーカス。

(仏)マリーはアンカーの仕事に復帰するものの、心ここに在らずの状態が増え、ディディエに休職を勧められる。休職中のマリーは今までの経験をいかして政治関連の本を執筆しようとを考えるが、死後の世界も気になり、その道の研究者についてを調べだす。
(米)料理教室に通うジョージは、メラニーと出会い恋心を抱く。沸き立つ心に水を差すように、部屋の前で待ち構えているビリーに紹介されて霊と交信して欲しいと食い下がる見知らぬ女。ジョージは扉を閉め、頑なに拒絶する。
(英)事故死したジェイソンの葬儀が終わり、母親は施設に入ることになる。マーカスは身受け人の夫婦の家に連れて行かれる。
(米)メラニーを部屋に招待して手料理をご馳走することにしたジョージ。しかし、メラニーはジョージの過去を知ると、興味本位で自分のことも霊視して欲しいとせがみ出す。断りきれないジョージはメラニーの隠していた幼い頃の虐待を視てしまい、メラニーは部屋を出ていく。
(仏)死後の世界を研究しているルソー博士に会ったマリーは、予定していたミッテラン大統領の本ではなく、自身の体験をもとにした死後の世界についての本を書き上げる。
(米)料理教室にメラニーが戻ることはなく、仕事もリストラされるジョージ。ここぞとばかりにビリーは、ジョージの力を使って起業する算段を進める。
(英)親代わりとなってくれている夫婦の家のお金を持ち出して姿を消したマーカス。彼は霊能力者の元を訪ね歩いていくが、誰も彼もインチキくさいだけで、誰もジェイソンとは交信してくれない。そんな時、ジェイソンの帽子が落ちたのを拾おうとしてマーカスは地下鉄に乗り遅れ、直後にその地下鉄がテロで爆破される事件が起きる。ジェイソンの存在を強く感じるマーカス。
(仏)一般受けしないマリーの本に難色を示していたエージェントだが、出版社と交渉してくれてマリーの本が英国で発売されることになる。
(米)ビリーの始めようとしている霊視商売に嫌気がさしたジョージは英国に渡り、敬愛する小説家チャールズ・ディケンズの生家を訪ねるなどして過ごす。

ロンドンのブックフェアの会場。運命に導かれるように、ジョージとマリーとマーカスは出会うこととなる。
マーカスはジョージの本物の力で、ついにジェイソンと交信することができたものの、それは永遠の別れでもあった。
そして、マーカスに背中を押され、ジョージはマリーと再び会うことにする。

映画と災害

この物語は穏やかなリゾート地の光景が一変するところから始まります。津波はリアリティーを持って押し寄せてきます。では災害を描いたディザスタームービーかと言えば、明らかに違います。今作は稀に災害映画の一本と扱われることがありますが、正直、リストアップした人は中身を見たのかと疑問を感じずにはいられません。
実際のところ、衝撃的な導入とは打って変わって、映画は精神世界を丁寧に描くものへと変わっていきます。
日本での公開は、東日本大震災が発生する3週間前からで、残念ながら予定よりも早く上映は打ち切られました。当時は致し方なかったものの、むしろ作品を見ることで心が救われると感じる人もいるかもしれない内容です。
この時期は、震災が起きたために公開が数年伸びた作品もありました。「唐山大地震」はタイトルからして当初予定していた震災から2週間後の公開は難しく、丸4年経ってからの公開となりました。ただ、この作品もやはりパニック映画ではなく、地震後のドラマがメインの話となります。1976年に中国の唐山で実際に起きた地震を基にしていて、そこから数十年に渡る家族の絆が描かれています。

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「ヒアアフター」は、製作の6年ほど前に起きたスマトラ島沖地震から想起された面があります。この大地震のマグニチュードは世界の観測史上2番目に大きなもので、史上3番目の規模となった東北沖地震の1.4倍ほどのパワーとされます。
香港から世界に進出した映画スターであるジェット・リーが、この時の津波に巻き込まれて軽傷を負ったことがニュースになりました。

オカルトとしてではなく

「ヒアアフター」は津波のシーンで始まりながらもディザスタームービーではないように、霊的なものが出てくるからといってオカルト系のホラー映画ではありません。
タイトルのヒアアフター(HEREAFTER)は here + after で、直訳通りに「これ以降、今後」の意味があり、転じて「来世、あの世」とも訳されます。映画の内容は、臨死体験だったり霊との交信がメインテーマなので、ストレートなタイトルと言えます。
随所に出てくる霊的なキーワードはオカルトチックなものながら、クリント・イーストウッド監督は恐怖的な描写は用いないで、一抹の寂しさとそこはかとない温かさを漂わせます。

ハリウッドスターの気配り

主演の一人であるマット・デイモンは、同時期にフィリップ・K・ディック原作の「アジャストメント」(The Adjustment Bureau)を撮影しました。こちらの作品は、アメリカの議会選挙の場面から始まるので、リアルな政治的物語になるのかと思いきや、フィリップ・K・ディックらしいSFの世界へと急展開していきます。
撮影時期がかぶることを懸念したマット・デイモンはイーストウッドに降板の相談をした席で、自分の代わりとして盟友ベン・アフレックの弟で2017年にアカデミー賞主演男優賞を獲得するケイシー・アフレックや、奇しくも「ヒアアフター」と同年のアカデミー賞にノミネートされた「ザ・ファイター」助演男優賞を受賞するクリスチャン・ベール、あるいはダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセン、マーベル・シネマティック・ユニバースでサノスやケーブルを演じるジョシュ・ブローリンといった面々の名前を挙げたと言います。
結果としてはイーストウッドが撮影時期を調整して、マット・デイモンがほぼ同時期に両方の作品の撮影に参加できるようにしました。

もう一方の「アジャストメント」を監督したのは、マット・デイモンも出演している「オーシャンズ12」の脚本家、ジョージ・ノルフィです。彼はデイモンの代表作であるジェイソン・ボーンシリーズの一作「ボーン・アルティメイタム」でも脚本を書いていて、「アジャストメント」が初監督作品でした。
マット・デイモンとしては「インビクタス」に続いてのイーストウッドとの仕事も大事でしょうし、ノルフィの初監督作を手助けしたい気持ちもあったでしょうから、丸く収まってホッとしたかもしれません。

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作品情報

原題:HEREAFTER(2010)
監督:クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)
出演:マット・デイモン(Matt Damon) セシル・ドゥ・フランス(Cécile de France)

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