「蜘蛛の巣を払う女」が新たなシリーズの幕開けを告げる


オリジナルシリーズの作者の死去によって新たな筆者を迎えてスタートしたミレニアムシリーズの映画化第1弾です。今作でもリスベットはコンピューターの世界から現実の世界まで縦横無尽に躍動します。

オチ直前のラストまでネタバレありのあらすじです。内容を知りたくない方はご注意ください。

あらすじ

DV夫から妻子を助けたリスベットに科学者バルデルから新たな依頼が入る。バルデルは自らが開発した全世界の軍事施設をコントロールできてしまうプログラムを回収し破壊することが望みだった。
ほとんどスタンドアローンの状態でしか活用できないプログラムはコピー不可で、1媒体から1媒体へと移動させることしかできないものだった。そして現在は開発に協力した米国の政府絡みであるNSAの中の特別機関が保有していた。
リスベットはクラッキングによってこのプログラムを自分のパソコンに移動させる。プログラムを奪われた職員のエドはすぐに逆探知をして、リスベットのいるストックホルムへと向かう。
同じ頃、リスベットの住まう部屋が何者かに爆破されノートパソコンが奪われてしまう。そうとは知らず待ち合わせにやってこないリスベットのことをいぶかしんだバルデルはスウェーデン当局に相談する。担当官のガブリエラはバルデルとその息子オーガストを隠れ家に匿う。
プログラムを起動するには博士の知るパスワードが必要だと知り、リスベットも隠れ家を監視して接触の機会を待つが、部屋を爆破した犯人が現れて博士を殺し、オーガストを連れ去ってしまう。

オーガスト救出のため、リスベットは距離を置いていた元恋人のミカエルとコンタクトし、犯人の割り出しを手伝ってもらう。
オーガスト奪還には成功したものの、肝心のプログラムは敵の手にあり、そのボスはリスベットの双子の妹カミラだった。幼少期、父親の虐待から逃れられたのはリスベットだけで、カミラは父の元に残り、その死後に組織を継いでいた。
オーガストだけでも無事に米国に逃がしたいリスベットはNSA職員であるエドの協力を取り付けるものの、カミラの組織の襲撃を受けて再びオーガストを奪われてしまう。

カミラたちが籠るのは、リスベットも幼少期を過ごした郊外の屋敷。リスベットは捕らえられ、オーガストはパスワードを白状させられる。ついに全世界の軍事施設を手中に収めたカミラだが、エドたちが救出に入り、カミラは命からがら逃走する。
崖の上で対峙するリスベットとカミラの視線には愛憎が渦巻いている。

シリーズ最新作

ここではしばしば触れてきたことであれですが、映画の邦題の問題です。今作の原題は「THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB」なので直訳すれば蜘蛛の巣の中の女になります。蜘蛛の巣にとらわれているという意味です。
邦題にあるように蜘蛛の巣を払うのでも、映画の内容的に間違っていないとはいえ、原作が IN としたのには意味があるはずです。払ってしまうのと捕らわれているのとでは当然ながら意味合いが違います。言ってしまえば邦題は結果をタイトルにしてしまったわけです。
ありがちな全く関係ない邦題に改題されるパターンではないだけに、わざわざ微妙に変える必要があったのか、苦言ではなく疑問です。

さておき、この映画は一連のシリーズ物の最新作となります。ただ、前作までの流れを知らなくても、あるいは忘れていても大丈夫です。この映画だけでストーリーを楽しめます。
一つだけ予備知識として持っておいてもいいかと思うのは、リスベットが凄腕のハッカーだということです。パソコンやスマホをちょちょっと操作すれば、ネットワークされているシステムは大抵操ってしまうことができます。
ちなみに、最近はようやく少しずつ浸透してきましたが、本来ですとハッカーはむしろいい意味でコンピューターに精通している人を指します。正確にはリスベットはクラッキング、つまりネットワークやシステムへの違法な侵入をおこなうのが得意なクラッカーと呼ばれる側です。
そんなリスベットが見せる肉体アクションやガンアクション、バイクチェイスなどの派手なシーンも多いので勘違いしがちですが、本作はアクション映画ではありません。ありませんと断言するとあれなので、どちらかといえば犯罪ミステリーだと申し上げておきます。

最新作のポイントはリスベットの少女時代が登場することです。彼女が、様々な事情で被害者となっている女性を助けることを生業とするに至った端緒が紐解かれています。

「ミレニアム」シリーズ

本作は小説を原作としたシリーズの映画化作品です。日本に入ってくるものとしては比較的珍しいスウェーデンの小説でありながら、世界的なヒット作として話題になりました。
第1作の「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」からシリーズはスタートします。原作も含め、主人公は一応男性ジャーナリストになります。ただし、リスベットもダブル主役のポジションにいます。
この小説第1作からして、スウェーデンでの原題は「女を憎む男たち」という意味合いのものであり、「ドラゴン・タトゥーの女」とは全く異なります。この変更は日本ではなく、アメリカでの出版時に改題されたものが引き継がれています。

原作者自身がジャーナリストを経験していて、その実体験が大いに活かされた内容です。残念ながら当初の三部作を書き上げる頃に原作者は病死してしまっています。内縁の妻にあたる女性も執筆には深く関わっているものの、新シリーズとなる第4作「蜘蛛の巣を払う女」からは新たな執筆者が手がけています。

強い女を演じる女優

このシリーズを見ていると、女性によるネットワークへの侵入とアクションといった要素から、押井守監督の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」を思い浮かべます。近未来を舞台とする「攻殻機動隊」シリーズと違って、「ミレニアム」シリーズは現代が舞台でSFとまではいかないため電脳空間にダイブすることもありません。
それでも、攻殻機動隊の草薙素子と同じように、リスベットは頭脳だけでなくバイクを乗り回しますしアクションも優れています。

タトゥーにピアスの出で立ちがクールなリスベットを過去に演じてきたのは、ノオミ・ラパスルーニー・マーラです。彼女たちはそれぞれに原作のイメージを損なわないクールさで演じています。
もし他の女優でリスベットをキャスティングするとすれば、スカーレット・ヨハンソンや若い頃のアンジェリーナ・ジョリーが真っ先に候補に挙がると思います。ただしあまりにもストレートにイメージできてしまうので意外性はありません。
今作でのリスベットはクレア・フォイが演じています。日本ではまだ決して知名度が高いとは言えない女優ながら、やはり小説から抜け出たような雰囲気を醸し出しています。
同時期に制作された「ファースト・マン」ではニール・アームストロングの妻を演じています。リスベットで見せた謎めいた様子とは異なり、家庭を顧みない夫に苛立つ60年代の妻を好演しています。

作品情報

原題:THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB(2018)
監督:フェデ・アルバレス(Fede Alvarez)
出演:クレア・フォイ(Claire Foy) スヴェリル・グドナソン(Sverrir Gudnason)


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