映画「コード・ブルー」から、医療系ドラマの映画化を考える


興行収入100億円のギガヒットラインに浮上した映画「コード・ブルー」の内容や評論を今さらするのもアレなので、ここではドラマから映画化するパターンについて見ていきます。とはいえ、あくまで「コード・ブルー」の回ですから、あらすじくらいには触れておきましょう。

あらすじ

乱気流によって多数の負傷者が出た現場に駆けつけたクルーたちは、トロントからの一時帰国で偶然居合わせた藍沢(山下智久)とともに救助にあたる。中には末期ガンに侵された結婚間近の妊婦・富澤未知(山谷花純)もいた。
次に緋山(戸田恵梨香)たちが向かうのはフェリーの衝突事故現場。海ほたるに衝突し炎上するフェリーの中に入った藍沢は、仲間をかばって感電昏睡してしまう。同じ現場で溺れていた中学生を発見するが、脳死状態で臓器移植をすることに。葛藤する両親に寄り添ったのは同じような経験をしていた橘(椎名桔平)だった。
藍沢の状態を心配する白石(新垣結衣)たちだが、そんな中でも藤川(浅利陽介)と冴島(比嘉愛未)の結婚式が近づいていた。余命少ない富澤のために予約していた式場を提供した藤川たちに、スタッフがささやかな結婚式をプレゼントする。
フェローの頃からの仲間との別れが近づき、それぞれが新たな一歩を踏み出していく。

テレビドラマからの映画化

「コード・ブルー」はドラマのシーズン1から高視聴率を博して、スペシャル版を挟みつつ10年かけてシーズン3まで描いた上で映画化となっています。劇場版は完結編のような作りながら、話題になっているからと映画だけを見ても楽しめます。ただし、キャラクターの成長を含め、初回から順を追えば、より楽しめるのは確かです。

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このように、ドラマの人気から映画化に至る作品はこれまでも数多くありました。大雑把な計算をすれば、ドラマの視聴率が15%あったとすると1800万人くらいが見ていることになるわけで、この内の1%でも映画館に足を運んでくれれば18万人です。これだけでざっくりと2億7000万円くらい、およそ3億円弱の興行収入が見込めてしまいます。
とはいえ、人気ドラマの映画化がこの数字では大コケと言われてしまうのが現状で、できれば視聴者の5%は見にきてもらいたいところでしょう。一方で、この計算では視聴者しか考慮されていなくて、実際は映画ファンや浮動層も含まれますから、ゼロベースの作品よりは手堅い計算が立てやすくなるのです。

数字的なことはさておき、ドラマから培われたチームの一体感やキャラクターの成熟など、一朝一夕ではない奥行きを持たせられるのも利点になります。気をつけなければならないのは、一見さんお断りの映画にしてしまうことです。前段で見たように、ドラマ版のファンだけで成功と言える数字を築き上げるのは意外とハードルが高いからです。

ドラマから映画への理想形とは

昭和の時代は映画が娯楽の中心だったこともあるようですが、平成も終わろうかという時代ではネットに押され、映画好きでもない限り映画館に足を運ぶのはせいぜい年に一回程度と言われています。それでも映画化されることがトピックとなるのは、100年以上にわたって遺されてきた名作群のおかげではないでしょうか。
だからと言って安易に映画化を目指すのはリスクがあります。世の中には制作費すら回収できない映画がたくさんあるからです。ドラマが始まる前から映画化を標榜するケースでは、視聴率が振るわなかったからと人知れず映画化がフェードアウトすることも珍しくありません。

連ドラではありませんが、「パ★テ★オ」はスペシャルドラマを2本放送して、結末を映画でというコンセプトで作られました。ドラマを見てしまったら嫌が応にも映画を見ないことにはすっきりしないことこの上ないわけです。このケースは失敗すると、映画館へ行くのが面倒だからドラマも見ない、ともなりかねないリスキーさがあります。
あるいは有名原作にありがちなのが、ドラマと映画が別物として作られるパターンです。映像化の権利がドラマと映画で別々に渡された場合、全く違うキャストで作られることになります。「クライマーズ・ハイ」「64 ロクヨン」などは、NHKのドラマと映画が別々に製作されています。
「チーム・バチスタの栄光」にいたっては、連ドラと映画が別に製作された後、連ドラベースの映画も製作されて、いずれもそれなりのヒットをしたのですから原作力の高さが際立ちます。続編となる「ジェネラル・ルージュの凱旋」も格好いい作品でした。

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【TBS Pictures】東城大学付属病院の窓際医師・不定愁訴外来の田口公子(竹内結子)は、院内における諸問題を扱う倫理委員会の委員長に図らずも任命された。そんな彼女のもとに、一通の告発文書が届く。その内容は『救命救急の速水晃一センター長(堺雅人)は医療メーカーと癒着している。看護師長は共犯だ』という衝撃的なものだっ...

医療ドラマのエポック

毎クールに必ず医療ものがあることからもわかるように、病院を舞台とした作品は視聴率が取りやすいようです。命の駆け引きはドキドキしたり涙したりしやすいからです。海外ドラマでも「ER」のように15シーズンにわたって描かれた名作があります。
「ER」をお手本にしたような「救命病棟24時」は進藤先生(江口洋介)や小島先生(松嶋菜々子)をはじめとした個性豊かな面々の成長が描かれ、第5シリーズまで続きました。映画化されることはありませんでしたが忘れがたい作品です。「コード・ブルー」のドラマ中でも横峯(新木優子)が「救命病棟24時」を見て救命医を目指したと明かす描写があります。

医療ドラマを描くとき、いかにスーパードクターであっても救えない命があることを伝えることも大切です。ときには仲間が病いに侵されたり大怪我を負うこともありますが、予定調和に何でもかんでも助かっては興ざめです。
広く知られた作品ではないかもしれませんが、アニメ「よみがえる空 -RESCUE WINGS-」からメディアミックス展開した「レスキューウィングス」シリーズは、「コード・ブルー」と同じくヘリコプターによる救助活動の物語です。ただし、このシリーズは航空自衛隊の救難隊が舞台となっていて、リアリティー重視の重たい話も多いのが特徴です。映画版のタイトルは「空へ -救いの翼 RESCUE WINGS-」で、主役を演じた高山侑子は父親が救難隊の救難員でした。

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作品情報

原題:コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-
監督:西浦正記
出演:山下智久 新垣結衣

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