「ドラゴンとユニコーンの剣」というファンタジー満載なサブタイトルが付く本作は、原題を「your highness」と言います。意味は陛下や殿下などへの尊称です。どちらが内容を的確に表しているかとか、考えるまでもないファンタジードタバタコメディでした。
あらすじ
モーン王国のサディアス王子は、女遊びが好きで、簡単なお使いをこなすこともできないダメ男。兄のファビアス王子は優秀で人望も厚く、魔術師リザーの操るサイクロップス討伐を果たし、囚われの姫ベラドンナと共に帰還する。サディアスは兄に嫉妬しているが、兄は弟を結婚式の付添人にしたいと申し出る。
結婚式の日、サディアスは自分を馬鹿にする臣下の言葉を聞き、召使いのコートニーと共に式をボイコットする。式場には魔術師リザーが現れ、ベラドンナを連れ去ってしまう。王の命令で兄ファビアスと共に奪還の旅に出ることになるサディアス。
旅の途中で預言者のもとを訪れた一行は、リザーの目的がベラドンナにドラゴンを生ませることだと知る。ベラドンナを取り戻すための期限は二つの月が重なる食の時までであり、リザーを倒すにはユニコーンの角でできた特別な剣が必要だった。
旅を続けようとする一行だが、無能なサディアスを大事にするファビアスに反感を抱いていた部下たちは、密かにリザーに通じていて兄弟を裏切る。
二人と召使いのコートニーで旅を続けることになったところ、サディアスが美女の罠に嵌りマーティーティーという妖術使いの手に落ちる。闘技場で闘わされていたところ、一族をマーティーティーに殺された女戦士イザベルが仇を討ちに来てマーティーティーを殺してしまう。
行きがかり上、共に旅をすることになった兄弟とイザベルだが、彼女に惚れたサディアスは旅の秘密をバラしてしまい、剣を探すためのコンパスを持ち逃げされてしまう。剣があると言われるマルディスダートンの街まで来た兄弟はイザベルを見つける。しかし、ファビィアスは追ってきた部下たちに捕まって、リザーの元へ連れ去られてしまう。
サディアスはイザベルの助けを得て、伝説の剣を手にすることに成功する。二つの月の食が迫る中、リザーの居城にたどり着いたサディアスたちはファビィアスを助け出し、最後の戦いに挑む。
ハリウッドでのコメディ映画やパロディ映画の地位の高さ
あらすじを読む分には至ってまともな剣と魔法のファンタージーに見えます。確かにストーリー上はそうでも、映画のテイストはかなりコメディチックなものになっています。話が真面目な方向に進みそうになると、スポンと外されるのです。主に下品な方向に。
アメリカンなギャグと申しますか、大味な笑いなので、笑えるかどうかは人を選びそうです。ただ、この映画に関しては高尚に楽しむのではなく、おバカな映画と割り切って鑑賞するのが正しい気がします。
日本でも数多いとは言えないまでも、この種の映画は存在します。目黒祐樹がルパンを演じた「ルパン三世 念力珍作戦」や福田雄一監督の「女子ーズ」あたりは真面目にバカをやっている映画でしょう。福田監督といえばテレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズや映画「銀魂」シリーズのヒットもあることですし、この路線を突き進んでもらいたいものです。
ところでハリウッドでは、コメディやパロディと呼ばれるジャンルが興行的にも成功を収めていて、毎月のように新作が公開され、時にシリーズ化されて何作も続くことがあります。
サイレント・ボブ役で知られるケヴィン・スミスや、「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラックの関わる作品群、あるいはウェス・クレイヴンの「スクリーム」をパロディ化した「最終絶叫計画」のシリーズなどはその最たるものです。
ナタリー・ポートマンの無駄遣い?
「ロード・オブ・クエスト」が興行的な成功を収めたかというと、かなり厳しい結果だったと言わざるをえません。本国での公開時は製作費の半分くらいしか興行収入を上げられず、続編を匂わすストーリー展開だったものの、以降そのような噂は全く聞こえてきません。
撮影前から失敗とわかっていて作る映画はないはずですが、ナタリー・ポートマンがヒロイン的なポジションで出演しているのは少し驚きます。「レオン」で鮮烈なデヴューを飾り、「スターウォーズ」ではアミダラ姫を演じ、才色兼備と称されるナタリー・ポートマンが選ぶには意外な役だからです。
お高くとまっているよりは好感が持てますし、俳優が幅広い役を演じるのはいいことなのでしょう。でも実のところどうだったのかというと、彼女の代表作の一本となった「ブラック・スワン」が大きく関わっていたのです。
当時、「ブラック・スワン」のオファーを聞いたナタリー・ポートマンは、「これぞ私の求めていた作品だ」と言ったとか言わないとか。すみません、勝手に創作しました。さておき、惚れ込んだのは事実で、製作開始を心待ちにしていました。ただし、ダーレン・アロノフスキーはクセのある監督ですし、メジャーな映画会社がゴーサインを出すか不透明な状況だったのです。
ナタリーは「ブラック・スワン」実現のために自分の出演料をカットしたり、製作者として名を連ねてもいいように、ギャラ目的で「ロード・オブ・クエスト」の出演を受けたとされています。結局、「ブラック・スワン」は20世紀フォックス系列の配給会社が決まり、すんなりと製作されていったのでナタリー・ポートマンは演技に集中すればいいだけとなりました。
そして、契約を交わしていた「ロード・オブ・クエスト」にも出演することになったというわけです。
「ブラック・スワン」のニナ役で見事にアカデミー賞主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンは、一方の「ロード・オブ・クエスト」でも女剣士イザベルをしっかりと演じきっています。ビキニに近い姿を披露したり、魔法使いと果敢な戦いを繰り広げます。
心の内は窺い知れないながら、女優魂を見せているのは間違いありません。
作品情報
原題:your highness(2011)
監督:デビッド・ゴードン・グリーン(David Gordon Green)
出演:ダニー・マクブライド(Danny McBride) ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)
コメント