人気原作「BLEACH」の導入部を映画化したわけで、今後のシリーズ化が望まれます。キャラクターの再現度は力が入っているだけに、あのキャラもこのキャラもと見てみたくなるからです。漫画の実写化は賛否両論の的ですが、問われるのは作品への愛です。
人気漫画の原作があり、アクション主体の映画でもあることから、あらすじはある程度ネタバレしています。ご注意ください。
あらすじ
喧嘩が強く、霊が見える体質の黒崎一護(福士蒼汰)は、幼い頃に母親(長澤まさみ)を亡くし、父親(江口洋介)と妹二人と暮らしていた。ある日、彼の前に死神の朽木ルキア(杉咲花)が現れる。一護の妹を襲った虚と呼ばれる悪霊退治の最中、ルキアは重傷を負ってしまい、虚を倒すために一護に死神の力を与えることにする。
虚を倒したものの、一護の潜在的な力の大きさでルキアは全ての力を奪われていた。仕方なく力を返してもらうまで一護を死神代行として使うことにするルキア。一護は反発しながらも従わざるをえない状況になってしまう。
死神の力を与える行為は許されないことと、ルキアのいた尸魂界からルキアの兄である朽木白哉(MIYAVI)の命を受けた阿散井恋次(早乙女太一)がやってくる。恋次に襲われた一護を助けたのはクラスメイトの石田雨竜(吉沢亮)だった。
だが、滅却師の一族である雨竜は死神に恨みがあり、一護に戦いを挑んでくる。その戦いの最中、雨竜の撒いたエサで強力な虚が現れて街を破壊していく。友人の茶度(小柳友)や井上織姫(真野恵里菜)を助けながら戦う一護は、その虚こそが幼い頃に母親を殺した仇だと気づく。
母の仇を討ち、再び現れた恋次をも負かした一護だが、白哉には全く歯が立たない。絶体絶命となった一護の前にルキアが立ち塞がり、一護の力を奪うのだった。
漫画原作の実写化
クールジャパンの代名詞でもある漫画やアニメは、世界に誇ることのできるコンテンツです。日本映画もそれに比肩するものがいくつかありつつ、こと漫画からの実写化となると、アメコミを100億円規模で実写化するハリウッドのようにはいきません。
日本の漫画原作を実写化するとき、その多くはアメコミのようなヒーローものではありません。現在では半分以上が少女漫画の映画化と思われ、日常生活に根ざした描写が主なので、実写化も決して困難ではないのです。
ただ、漫画の中には近未来や架空の世界を描いたものもあって、着ているものや扱っている道具が現実世界のものではないことがしばしばあります。この時に難しいのがコスプレ感が漂ってしまうことです。つまり、ショボく見えてしまう危険性があるわけです。
それを回避するには、一つに制作物に気を配ることであり、もう一つが演者の演技力です。世界観を表現するのは衣装や小道具などの見た目だけでなく、演者の持つ雰囲気もポイントとなります。
現在、この雰囲気力が最も高いと目されているのが、本郷奏多ではないでしょうか。映画やドラマで様々な漫画キャラクターを演じていて、そのどれもが妙にハマっているから不思議です。
本郷奏多が印象的だった漫画原作映画をざっと挙げるだけでも、「テニスの王子様」「NANA2」「GANTZ」「進撃の巨人」「鋼の錬金術師」と多彩です。
ここまで持ち上げておいてあれですが、「BLEACH」の佐藤信介監督作品にも縁がありながら、本郷奏多は今作には出演していません。
佐藤信介と漫画原作の相性
佐藤信介監督による漫画原作映画を挙げてみると、「GANTZ」「アイアムアヒーロー」「デスノート Light up the NEW world」「いぬやしき」「BLEACH」とメジャーな大作が並びます。漫画に近い世界観を持つ有川浩原作の小説「図書館戦争」の実写映画も手がけていますし、現在の邦画界でCGとアクション絡みの大作を任せられる有数の監督です。
佐藤信介はぴあフィルムフェスティバル出身で、劇場用長編2作目に「修羅雪姫」と撮りました。この作品にも小池一夫原作の漫画があるものの、梶芽衣子が主演したバージョンとは違って、ほとんどオリジナルの設定に変更されています。
「修羅雪姫」で特筆すべきは釈由美子の凛々しいアクションです。それまでのタレント業からは想像もつかないクールさは新境地を開拓して、アクション監督を務めたドニー・イェンの演出に見事に応えています。作品自体も近未来的な雰囲気と泥臭さの混在する世界に引き込まれ、スピード感の溢れる爽快な仕上がりでした。
佐藤信介と漫画原作のコラボはさらなる大作も続きますし、今後も楽しみです。
少年ジャンプ作品の実写映画
「BLEACH」は週刊少年ジャンプで連載された漫画で、雑誌のテーマである友情、努力、勝利がふんだんに盛り込まれています。つまりはハラハラドキドキと熱さに溢れていて、アメコミチックとも言えます。
他にも、ここ最近は少年ジャンプの漫画から「銀魂」「ジョジョの奇妙な冒険」「暗殺教室」など、数多くが実写映画化されています。それ以前にも「るろうに剣心」「DEATH NOTE」「変態仮面」などがありましたし、とにかく漫画からアニメ、そして映画と、少年ジャンプの原作力には目を見張ります。
少年ジャンプからの実写化では、必ず話題になってしまうハリウッド版「DRAGON BALL」という迷作もありました。他にもハリウッドではテレビドラマながら「ONE PEACE」の実写化が進行しています。不安しかない人も少なくないとはいえ、全てをひっくるめて楽しみを提供してくれているのです。
結局、「BLEACH」はどうだったのか
映画「BLEACH」の物語は始まったばかりです。言ってしまえば、原作の勢いがついたのも尸魂界篇に入ってからです。数多の隊員たちが登場していく話をまとめるのは簡単ではないにしても、愛を感じない映画ではなかっただけに、続きにも是非チャレンジしてもらいたいと無責任に期待するのみです。
「ジョジョの奇妙な冒険」はシリーズ構想が頓挫してしまいましたが、果たして「BLEACH」にシリーズ化の目はあるのでしょうか。
それは、死神のみぞ知るのです。いまいち。
作品情報
原題:BLEACH 死神代行篇(2018)
監督:佐藤信介
出演:福士蒼汰 杉咲花
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