「愛と青春の旅だち」を迎えるまでには壁がある

80年代を代表する名作の一つで、リチャード・ギアの人気を決定づけた一本でもあります。
ハードな訓練を受けながら恋愛もしっかりとこなせるのは、まさに青春時代の特権。
時代に左右されない、誰もが通過するほろ苦い青春の断片が感動を与えてくれます。
あらすじはラストまでネタバレありで記しているので、鑑賞前に知りたくない人はご注意ください。

あらすじ

母親の自殺により、フィリピンに駐在するアメリカ海軍兵の父親の元に行くことになったザック・メイヨ
父親は子育てに全く興味がなく、女遊びが好き。
だが、ほかに行き場のないザックはそこで少年時代を過ごすことになる。
成長したザックはパイロットになる夢を叶えるため、海軍士官養成学校に入学する。

全国から集まった男女の前に現れたのは、教官となるエミル・フォーリー軍曹
フォーリー軍曹は新入生を整列させると、徹底的にマナーを仕込んでいく。

街の製紙工場で働くポーラ・ポクリフキとリネット・ポメロイは、海軍の兵士と結婚して玉の輿に乗ることを目論み、士官学校に出入りしていた。
そんな二人を見かけるザック。

13週に及ぶ訓練が始まると、雑談をしがちなザックはフォーリーに目をつけられる。
そんな中でザックは、生徒たちの日課である装備品磨きに苦労する仲間に対して、どこからか調達してきたピカピカの装備品を売りつけて小銭を稼いでいた。
訓練では優秀な成績を収めるザックだが、仲間たちとはつるまずに、一人でいることが多い。
女生徒のキャシー・シーガーは、体力の差から訓練に取り残されがちでも航空力学の学科には強い。
一方のザックは、勉強がまるでダメだった。
ある日、ピカピカの装備品を仕入れているところを同級生のシド・ウォーリーに目撃されたザック。
シドのブーツをタダにする代わりに、ザックは航空力学を教えてもらうことにする。

士官学校のパーティーで、ザックとシドは、ポーラとリネットに出会う。
ザックとポーラ、シドとリネットは、互いが卒業までの遊びと割り切って付き合い始める。

不時着水の際のコックピット脱出訓練に失敗して死にかけた同室のダニエルズが任意除隊(DOR)するなど、厳しい訓練に仲間たちが少しずつ減っていく。
さらに、ザックが商売用に隠し持っていた整備済みの装備がフォーリーに見つかり、ザックは居残りでさらに厳しい懲罰訓練を受けさせられる。
フォーリーはザックに任意除隊を持ちかけるが、外の世界に居場所のないザックは必死に食らいついていく。

ザックは、ポーラの家に招かれて家族と食事をするが、その席には奇妙な緊張感が漂っていた。
帰りがけにザックがその理由を尋ねると、今の父親はポーラの実の父ではなく、本当の父親はかつての士官学校の生徒だったことがわかる。
学生時代の一時の遊びで、生まれたポーラを捨てて去っていった父親。
卒業すれば自分も別の任地へと去っていくことになるザックは、ポーラと距離を置くことにして、訓練を口実に連絡を取らなくなる。

シドの両親とともに食事をしたザックは、シドが戦死した兄の後を継ぐために海軍に入り、兄の恋人だったスーザンという女性との結婚が決められていることを知る。
そのスーザンとリネットと、どちらを愛しているのかというザックの問いに答えられないシド。

厳しかった訓練も残り2週となり、ザックたちは卒業を目前に控えていた。
サーキットトレーニングでの記録を作れそうなザックは、皆から新記録を期待される。
しかし、ザックは記録を目前にして引き返し、シーガーが苦手にしている壁登りを一緒に付き合ってやるのだった。
自分の記録よりも仲間のことを優先したザックの行動を見つめるフォーリー軍曹。
入学時には仲間を作ろうとしなかったザックだが、今では仲間との絆が生まれていた。

減圧訓練に失敗したシドは、両親の期待に応えることはできないと自信を失くす。
そんな時、リネットが妊娠しているかもしれないと知り、シドは卒業間近であるにもかかわらず学校を辞めて、リネットとの地道な暮らしを選ぶ。
リネットにプロポーズするシドは、妊娠は間違いだったと告げられても、構わないから一緒に故郷で暮らそうと話す。
リネットは、シドが海軍士官となって、世界中の任地へ行くのについていくのが夢だった。
デパートで働くシドには興味がないと、海軍を辞めたことをなじり、指輪を受け取らずに去るリネット。
打ちひしがれたシドは、思い出のモーテルで首を吊って自殺した。

シドを発見したザックは荒れた心でフォーリーに食ってかかる。
二人は格闘技場で闘い、最後にはフォーリーがザックを叩きのめす。

卒業式。
訓練を終えたザックやシーガーたちが祝辞を受ける。
教官のフォーリーに礼を述べにいくザックたち。
だが、フォーリー軍曹は下士官に過ぎず、卒業と同時に少尉となってフォーリーより上位となったザックたちに、敬意を持って応える。

荷物をまとめて寮を出るザック。
ゲートでは、フォーリー軍曹が新たな生徒を迎えて、マナーを叩き込んでいた。

ザックはポーラが働く工場へとやってくる。
そして、ポーリーを抱き上げるとポーラの母親に目礼して、そのまま二人で出口へと向かうのだった。

メインテーマとなる歌曲

この映画とセットで語られるのが、主題歌「Up Where We Belong」です。
ラストシーンの感動を倍増させるのはもちろん、メインテーマとして劇中でも効果的にメロディラインが使用されます。
劇伴の素晴らしさを改めて実感させてくれる、映画史に残る名曲の一つであり、アカデミー賞の音楽賞を受賞しています。

デュエットを歌っているのは、グラミー賞にノミネートされたこともある実力派シンガーのジョー・コッカーと、映画「ダーティー・ダンシング」の主題歌「タイム・オブ・マイ・ライフ」などでもアカデミー歌曲賞やグラミー賞を受賞しているジェニファー・ウォーンズという強力な二人です。

原題の意味するところ

愛と青春の旅立ちという邦題は、いかにも甘ったるい物語のようですが、決して内容とかけ離れてはいません。
とはいえ、原題は全く異なるタイトルです。
原題は「An Officer and a Gentleman」ですが、オフィサージェントルマンは何を表しているのでしょうか。

オフィサーは士官という意味です。
映画の舞台は海軍の士官学校なので、これは分かります。
一方のジェントルマンは、一般的に紳士と訳されます。
これは少し注意が必要で、いわゆる英国紳士をイメージすると、タイトルの意味がわからなくなるかもしれません。
そこで、紳士とは何かを調べてみると、勇敢さと優しさを持ち、礼節と名誉を重んじる人とあります。

つまり原題は、「士官であり且つ紳士たる者」という、まさに主人公たちが目指していく人物像のことなのです。

邦題も決して悪くはないです。
かなり特殊な海軍士官学校が舞台とはいえ、まさに青春の痛みと煌めく愛の物語だからです。

映画の立役者

若きリチャード・ギアが、反骨心溢れる主人公を見事に演じています。
一方で、ルイス・ゴセットJrの存在も、この映画を名作にしている大きな要因の一つです。

厳しくも生徒のことを第一に考えて目を配り、適性がなければ毅然とDORを勧めるフォーリー。
真意を読み取れない生徒には、典型的な鬼教官に見えるでしょうが、感情のままに暴力を振るうような教師ではありません。

海軍の士官を養成するという大役を任され、その任務に全てをかけるフォーリーの真意を生徒が知るのは卒業式です。
卒業式でのフォーリーの振る舞い、決して派手さはありません。
それでも、この教官の矜持と心の機微を的確に表現していて、この作品でルイス・ゴセットJrがアカデミー賞で助演男優賞を受賞したのも納得です。

ルイス・ゴセットJrといえば、「アイアン・イーグル」シリーズも外せません。

「トップガン」ほど有名ではないものの、パート4まで製作されている戦闘機乗りの話で、主人公のチャッピーを演じています。
パート3の「エイセス/大空の誓い」では、新田真剣佑の父親であるサニー千葉こと千葉真一と共演していたのも印象的です。

Louis Gossett Jr. のことを一部では、ルイス・コゼット・ジュニアと表記していることもありますが、音声で確認する限り、綴りの通りにゴセットの発音で間違いありません。

作品情報

原題:An Officer and a Gentleman(1982)
監督:テイラー・ハックフォード(Taylor Hackford)
出演:リチャード・ギア(Richard Gere) デブラ・ウィンガー(Debra Winger)

コメント