代表作だらけのポール・ニューマンが愛した「スラップ・ショット」


弱小アイスホッケーチームが型破りな戦略で連戦連勝していきます。疲弊した町を再び活気づける展開も加わって、爽快な気分にさせてくれる作品です。大スターの主演した隠れた名作と言ってもいいかもしれません。

以降のあらすじは、チーフスの試合の様子を中心にネタバレありです。試合の合間の人間模様がストーリーの肝とはいえ、鑑賞前に知りたくない人はご注意ください。

あらすじ

アメリカの田舎町チャールズタウンは工場労働者の町で、アイスホッケーチームが唯一のエンタメだった。そのチーム・チーフスは連戦連敗で選手はやる気がない。しかも工場の閉鎖が決まり、大量の失業者が出るというどん底の状態にある。
選手兼任コーチのレジーは、チームの立て直しを図りたいものの、やってきた新人は三つ子のような三兄弟で、全く使い物になりそうにない勢いだけの荒くれだった。
遠征試合も惨敗でチームには解散の噂もある中、レジーはチームメイトにフロリダにチームごと買い取ってくれるオーナーがいると嘘をついてやる気を出させる。しかし、やる気だけでは勝てないと悟ったレジーは、正統派なホッケーを捨てる決心をする。
ラフファイト全開でプロレスのような試合を始めたチーフスは、両チームに負傷者を出す展開ながら連勝を重ねる。その姿に鬱屈していた地元も熱狂し、多くのファンがリンクに駆けつける。

レジーは別れた妻が気になっているが、チームメイトであるブライトンの妻の相談に乗るうちに関係を持つ。
優勝決定戦まで勝ち続けても、現在のチーフスを所有するオーナーは表舞台に姿を現さない。フロリダ移籍が嘘であることをチームメイトに明かせないレジーは、なんとかオーナーを見つけ出して直談判するが、チーム解散は規定路線で覆せそうになかった。
万事休すで全てをチームメイトに明かしたレジーは、最後に正統派のホッケーも戻って勝負しようとラフファイトを禁じる。
しかし、殴り合いを期待している観客からはブーイング、敵からは挑発を受け、ついにいつもの喧嘩ホッケーが飛び出し、リンクは大混乱になる。
収集がつかなくなる中、リンクに出たブライトンが滑り踊りながらストリップを始める。毒気を抜かれた両チームと観客。
そして、見事チーフスは優勝し、華々しくパレードが開催されるのだった。

アメリカでのアイスホッケー

アメリカには4大スポーツと括られる NHL NFL NBA MLB があります。
この中で日本人に一番馴染みが深いのはMLB = メジャーリーグベースボールでしょう。野茂英雄からイチロー松井秀喜田中将大大谷翔平など、日本のプロ野球からも多くの選手が移籍して活躍しています。
また、日本でもプロリーグの始まったバスケットボールのNBAも比較的知られています。90年代のシカゴ・ブルズで活躍したマイケル “Air” ジョーダンを始め、シャキール・オニールレブロン・ジェームズステフィン・カリーなど、見る者を魅了するスタープレイヤーが数多くいます。
一方で、日本ではラグビーとの区別化からまだ一般に広く浸透しきっていないのがアメリカンフットボールのNFLでしょうか。ただ、こちらも80年代のジョー・モンタナからペイトン・マニングトム・ブレイディといったクォーターバックのスターが存在します。

残る一つ、アイスホッケーのNHLは、日本ではウィンタースポーツ自体の競技人口の割合が他に比べて少ないこともあってか、アメリカの4大スポーツの中では最も知られていないと言われても仕方がありません。
ただし、それはあくまでも日本での認知度であって、アメリカでは正真正銘に4大スポーツの一角を担っているのです。
そのため、日本での公開規模などはさておき、アイスホッケーを題材にした映画は多く作られています。
代表的なのが「飛べないアヒル」(原題;The Mighty Ducks)です。1992年のこの映画はチャーリー・シーンを弟に持つエミリオ・エステベスが主演しています。
エミリオ・エステベス演じるゴードンが少年ホッケーチームを立て直していくのですが、その展開は弱小の少年野球チームを立て直していく「がんばれ!ベアーズ」のようです。
両作品共に問題児を抱えてやる気がなく、連戦連敗だったチームが新たなコーチと一緒に奮起していくストーリーになります。これはもう映画に限らずスポーツを題材とした作品の典型的なフォーマットであって、日本では「ROOKIES」がこのパターンでヒットした作品の一つとなります。

町興しをする

スポ根ものだけでも十分にドラマ性があるところ、「スラップ・ショット」にはもう一つ町おこしの要素が加わります。寂れる一方の田舎町を、スポーツを通して盛り上げていくのです。町おこしもまた映画では定番のテーマで、洋画も邦画も数多くの作品が作られています。
中でも資源の枯渇やクリーンエネルギー、エコロジーの台頭で姿を消すことになる鉱山や鉄鋼業で成り立つ街や人を描くものには秀作が多くあります。
抵抗虚しく失業への流れは避けられず、なんとか踏ん張ろうとした人たちも最終的には新たな道を探らざるを得ません。

男性ストリップに活路を見出そうと奮闘する鉄鋼業の町の「フル・モンティ」や少年と父親の絆が温かい感動を誘う鉱山労働者の「リトル・ダンサー」は、どちらもイギリスの映画です。ミニシアターが全盛だった90年代末から00年代初頭にスマッシュヒットしました。
日本では2006年に、いわき市の炭鉱を舞台にした「フラガール」が公開されて日本アカデミー賞で最優秀作品賞を獲得しました。この映画は現在も続くスパリゾートハワイアンズの誕生にまつわる実話がベースになっています。

ポール・ニューマン

「スラップ・ショット」の主演はポール・ニューマンです。2008年に83歳で亡くなりましたが、言わずと知れたハリウッドでも屈指のスターです。
数多くの出演作には名作も多く、まさに枚挙にいとまがありません。あえて代表作を挙げるならば賭けビリヤードの世界を描く「ハスラー」は続編も作られ、若きトム・クルーズと共演しています。
ロバート・レッドフォードと共演した「明日に向かって撃て!」に、再びロバート・レッドフォードと組んだ「スティング」もあります。両作品は本作と同じくジョージ・ロイ・ヒルが監督しています。彼は「明日に向かって撃て!」でアカデミー賞にノミネートされ、「スティング」でアカデミー賞の監督賞を受賞しています。
スティーブ・マックイーンとどちらがクレジットのトップになるかで話題となり並行表記が生まれたとも言われる「タワーリング・インフェルノ」は、超高層ビル火災を描くパニック映画の傑作です。

そんなポール・ニューマンが生涯の出演作の中で最もお気に入りであるとよく答えていたのが、実は本作「スラップ・ショット」なのです。前段で触れたように日本ではマイナーなスポーツということもあって、彼の作品の中では広く知られているとは言えないかもしれません。

作品情報

原題:SLAP SHOT
監督:ジョージ・ロイ・ヒル(George Roy Hill)
出演:ポール・ニューマン(Paul Newman)


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