非情なままに臓器を回収していく男の立場が逆転していく様は、価値観が視点によって変わることを浮き彫りにするタイプの映画と言えます。SFの装いで作られつつ、現代社会に置き換えても十分に通用するドラマ性を持っています。
このあらすじにはラストの決定的なネタバレを含んでいます。鑑賞前に知りたくない方はご注意ください。
あらすじ
臓器や体の器官を簡単に移植できるようになった近未来、その支払いにおけるローンの返済は大変で、滞納が続けば回収屋によって心臓であろうと容赦なく体から取り去られていく。レミーも回収屋=レポメンの一人であり、エース級の非情な腕前だった。
レミーと小学生の頃からの腐れ縁で、ともに戦場にも行ったジェイクはレミー以上にビジネスライクで粗雑な取立てをしていた。レミーには妻のキャロルがいて一人息子のピーターを愛していたが、キャロルは家族のためにもレミーに取立てではなく営業の方へ回って欲しいと願っていた。
レミーの家で催されたパーティーの日、ジェイクはあろうことかレミーの家の前で回収をおこなう。それを知ったキャロルはレミーに最後通告をする。レミーは上司のハンクに転属を申し出ようとするが、結局言い出せない。そして、キャロルはピーターを連れて家を出てしまう。
失意のレミーは遅まきながら転属を決意するものの、最後の取立て時に機械が誤作動して重傷を負う。病院のベッドで気づいたレミーの心臓は人工のものに取り替えられていた。
リハビリを終えて業務に復帰したレミーだが、自らの中に人工臓器が入ったことが原因で相手の気持ちを推し量るようになり、非情な回収作業ができなくなってしまう。念願の営業に移ったものの仕事はうまくいかず、やがて返済が滞りがちになる。見かねたジェイクが滞納者の巣窟に連れて行くが、レミーは回収するどころか反撃を受けて気を失う。
廃墟で目を覚ましたレミーが聞こえてきた歌声に導かれていくと、以前に酒場で見かけたことのあるベスがいた。ベスに惹かれていたレミーは、彼女が滞納者で全身の多くを人工のものに替えていることを知り、自らと彼女との移植の記録を消すために社内に侵入する。
記録の改ざんをしているところをジェイクに見つかり見逃してもらったものの、レミーとベスは街から逃亡せざるを得ないことになる。国外逃亡を目前に空港で発見され、かつての仲間だった回収屋たちを振り切るレミーとベス。
会社はついに相棒だったジェイクを回収に向かわせる。絶体絶命のピンチを命からがら逃げ出すレミーたち。
(以降は決定的なネタバレとなります)
レミーは上司のフランクを脅し、滞納記録が本社で管理されていることを聞き出す。厳重な本社の警備をくぐり抜け、心臓部に到達したレミーは自分とベスのデータを消去し始める。ジェイクとフランクがやってくるが、レミーの決意を見たジェイクはフランクを殺してレミーを助ける。
管理区画を爆破して海外へと逃げおおせたレミーとベス。ジェイクも一緒にビーチでのんびりと過ごすのであった。
というのはレミーの見ている夢であり、ジェイクによる最初の襲撃時に瀕死となったレミーは人工の脳にすげ替えられ終わらぬ夢の世界に生きているのだった。
カルト的名作との関連具合
邦題は「レポゼッション・メン」となっているものの、原題は「レポメン(REPO MEN)」です。これは明らかに1984年の「レポマン(REPO MAN)」を意識して付けられています。レポ=REPOはレポゼッション=repossessionの短縮系で、回収という意味合いです。Repo Manで回収屋あるいは取立屋との意味を持つ俗語になっています。
最近ではスポーツで支配率を表す際にポゼッションという言葉を使うことが増えているので、支配を取り戻すという意味からも、レポゼッションとした方が耳障りがいいとの判断によって邦題をつけたのかもしれません。しかし、ここは元ネタ的な映画のタイトルも踏まえ、原題のままにレポメンとしても良かったのではないでしょうか。
さておき、84年の「レポマン」は、チャーリー・シーンを弟に持つエミリオ・エステベスがハリー・ディーン・スタントンとともに主演しています。こちらもやはりSF映画ではありながら、より突拍子なくコミカルな要素もあって、まさにカルトな雰囲気に満ちています。
「レポゼッション・メン」が原題の「レポメン」を含め複数形となっているのは、オリジナルともいうべき「レポマン」と区別しているからでもあり、レミーとバディの関係になるジェイクもかなりのキーパーソンとなる物語だからでしょう。そもそも組織の内紛的な話で、複数の回収屋が登場するのでタイトル的におかしなところはありません。
さておき、単純に近未来SFとして、何よりラストに待ち構えるドンデン返しを見るのが面白い映画です。
相棒役の人選
レミー役のジュード・ロウとバディを組むのは、曲者をやらせればハリウッドでもトップクラスの名優フォレスト・ウィテカーです。「ハスラー2」での怪演が強い印象を残し、以降も一筋縄ではいかないキャラクターを数多く演じています。一見するとドンくさそうな体型も相まって、裏切り役を演じさせればピカイチです。なんといってもあの目つきが心の奥を読ませない雰囲気を漂わせます。
映画通であればよく知っている俳優でしょうし、アカデミー賞の主演男優賞にも輝いた名優です。それでも一般的には決して知名度が高いとは言えないと思われます。無理やり日本の俳優に当てはめれば荒川良々あたりでしょうか。
実はさらに知られていないものの、フォレストの二人の兄弟も俳優をしています。彼の独特の目つきは眼瞼下垂と呼ばれる症状で、まぶたが垂れ気味になるものです。しかし、その雰囲気をうまく生かして上述のように個性派かつ性格俳優であり肉体改造を含めたカメレオン俳優として実力を振るっています。
作品情報
原題:REPO MEN(2010)
監督:ミゲル・サポチニク(Miguel Sapochnik)
出演:ジュード・ロウ(Jude Law) フォレスト・ウィテカー(Forest Whitaker)
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