「キラー・エリート」に登場するフェザーメンは実在するのか?


SASをはじめ、ネイビーシールズやスペツナズ、コブラなど、各国にはタスクフォースの類があります。彼らは無類の強さを誇りますが、もし秘密作戦が元で報復に狙われたとしたら、彼らを守ってくれる組織はあるのでしょうか。
映画ではSAS隊員を狙う殺し屋たちの側を主人公にして、隊員を守るフェザーメンとの戦いが描かれます。最強のSAS隊員を守る秘密組織と勝負する殺し屋ですから、どんだけ強いんだってわけです。さすがはジェイソン・ステイサム。

あらすじ

メキシコでの暗殺任務に成功するも、傷を負ったダニーは引退を決意する。子供の頃に住んでいたオーストラリアでのどかな暮らしを送っていたダニーの元に、殺し屋仲間だったハンターが中東のオマーンで捕まったという知らせが入る。ハンターを返して欲しければ、3人の息子たちを殺した英国軍特殊部隊SASの隊員に報復しろというオマーンの族長。面会したハンターは断れと言うが、ダニーは困難なミッションを引き受ける。
仲間を集めたダニーは、オマーンでの部族殺害に関わった元SASの隊員を一人ずつ追い詰めていく。しかし、その動きを察知したフェザーメンと名乗る組織がダニーたちの行動を探り始める。フェザーメンとは元SAS隊員たちによる組織で、今は様々な業界で地位を築いていたため、今更過去の拙い作戦が世に出るのを阻止したかった。
フェザーメンが手足として使うのは、SASを辞めた後も一般社会に馴染めず、未だに軍人気質の抜けない男スパイク。スパイクはダニーの情報を集めて先回りしていくものの、ダニーは大胆にSASの行軍訓練に参加してターゲットの教官を殺す豪胆さを見せる。
いよいよ警戒を強めるスパイクの網をくぐって、最後のターゲットを事故に見せかけて殺したダニーだが、国外脱出前に仲間がフェザーメンの手に落ちてしまう。そこで、スパイクと対峙したダニーは幕引きを宣言して仲間の解放を取引し、姿を消す。

無事にオマーンの族長からハンターを取り返し、オーストラリアに戻ったダニーは幼馴染のアンと幸せな日々を送るはずだった。しかし、平穏を破る一本の電話が鳴り、直後アンの枕元に一発の銃弾が置かれているのを見て怒るダニー。アンの事をハンターに任せたダニーは、まだ残っていたというターゲットの元へ向かう。
ターゲットのそばにはスパイクが待ち構えていたが、ダニーはターゲットの暗殺に成功する。実は殺害はフェイクだったものの、そうと知らないスパイクはダニーを捕らえる。
そこに現れたのはダニーに暗殺を仲介しているエージェントで、ダニーとスパイクを抹殺しようとする。なぜダニーまで狙われたのか。実は、中東の石油の利権が絡んでいた今回の任務で、ダニーは使い捨ての駒として使われていたに過ぎなかった。

ここに、ダニーとフェザーメン、暗殺組織との三つ巴の戦いが始まる。生き残るのは誰だ!
というか、疑うまでもなく主人公のダニーなんですけどね。

ジェイソン・ステイサムとは誰ぞや

映画界にはアクションスターと呼ばれるポジションがあって、ジャッキー・チェンなどのリアルカンフー系からハリウッドのスタントダブル系まで様々な活躍をしています。ジャンルにしても宇宙を股にかけるようなSFあり、古代の戦あり、血湧き肉躍るバトルが繰り広げられます。
アクション俳優になりたいからといって、必ずしも格闘技やアクロバットを習ってきた人ばかりではないので、映画ではスタントマンの存在やカット割りでのスピード感を出す演出は欠かせません。加えて幸運にも近年ではCG技術でほとんど不可能な動きはない状況です。
サモハンキンポーの如く、キレッキレのファットマンアクションもクールとはいえ、やはり肉体美との相乗効果も見たいのが人情です。シュワちゃんはボディビルダー、スタローンはボクシングといった素地がありますし、ドゥエイン・ジョンソンはザ・ロックとして知られるプロレススターでした。

では、ジェイソンはどうなのかというと、飛び込みの選手でした。飛び込み台から飛び出してアクロバティックに舞い、水飛沫を上げずに着水するアレです。その後、モデルもしていたくらいなので、体を動かすことも肉体で魅せることもお手の物なわけです。吉川晃司阿部寛田中要次を足したようなものとでも言えばいいでしょうか。
アクションの素地はいいとして、演技においてはこれといった実績を持っていなかった彼が掴んだチャンスは、同じイギリスの著名な監督ガイ・リッチー「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルス」への出演です。テンポ感のあるカット割りとお洒落な演出満載の傑作でデヴューしたジェイソンは、程なくフランス映画の「トランスポーター」シリーズでBMWを駆る運び屋役でアクション俳優としての地位を確立していきます。
今作「キラー・エリート」に前後して「エクスペンダブルス」シリーズに出演したあたりで、ますます世界的なアクションスターと認知されるのでした。

デ・ニーロがいれば、アクション一辺倒ではないのです

ストーリーはしっかりあるものの、それを追いかけるよりはジェイソン・ステイサム節のどんぱちを中心に楽しむのがいいのかもしれません。シュワちゃんやスティーヴン・セガールの作品も、細かい内容を楽しみにするより、アクションムービーとして観たい人が多いのでは。
そこで重要になってくるのがロバート・デ・ニーロの存在です。言わずと知れたデ・ニーロ・アプローチの実践者として、映画に一層の厚みを与えてきました。近年はさすがにフラットに臨むことも増えているようで、鬼気迫る演技よりは円熟の余裕を感じさせます。
本作でもゲスト的な、言ってしまえばお飾りに過ぎないかと思いきや、結構キーパーソンだったので安堵したものです。しかも、どこか裏がありそうで、信じていいのかいけないのか、なかなかの食わせ者です。面目躍如。
結局のところ、ストーリーに引き込まれているってことではありますが、裏切り合いはなんとなく理解していれば十分で、男たちの生き様みたいなものに感情移入して、誰が幸せを得るか興味津々というわけです。

真実か創作か

現実世界のエリート部隊を架空の物語の世界に持ち込むのは、ストーリーテリングの代表的な方法の一つです。「事実に基づく」と書かれて始まる物語は数多あります。本当にあった出来事がベースになっているならいいのですが、中には興味を引くために、さも真実であるかのように作られたものもあります。
キラー・エリートの原作「THE FEATHER MEN」が発行された時、これが実話か作り話かで論争が起こりました。ポイントは暗殺事件とフェザーメンなる組織の存在です。出版社側はノンフィクションをほのめかしましたが、20年後、映画化に前後して著者自身がフィクションのストーリーであると認めています。
作中に殺されたSAS隊員として実名で登場する人物に関しては、遺族に了承を得て名前を使用したというのです。議論は決着したものの、今や政府とマスコミの発表が真実の全てではないことを人々は知っています。何が本当かは簡単にはわかりません。
この物語にしても、圧力や金銭力でフィクションと言わされているかもしれないじゃないですか。なんて疑う時点で、出版社の思惑にまんまとはまったってことですね。

作品情報

原題:Killer Elite(2011)
監督:ゲイリー・マッケンドリー(Gary McKendry)
出演:ジェイソン・ステイサム(Jason Statham) クライヴ・オーウェン(Clive Owen)

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