「ロミオとジュリエット」の悲恋は崇高か暴走か


シェイクスピア作品の中でもトップクラスの知名度があるロミジュリは、何度も映画化されています。
その中で、決定版との声も多いのが本作です。
瑞々しい少年少女の恋愛悲劇は、現代の視点で見ると少々身勝手が過ぎるような気もします。
それとも、汚れなき純愛は時代を超えて普遍なのでしょうか。

名作のあらすじを今更とも思うので、簡潔にラストまで記しています。
クライマックスのネタバレもしていますが、ロミジュリを象徴するシーンなので構わないしょう。

あらすじ

ベローナの街で小競り合いを続けるモンタギューキャピュレットの両名家。
モンタギューの跡取りであるロミオは恋に悩み、争いには無関心。
キャピュレットの娘ジュリエットは14歳にしてパリス伯爵から求愛されている。
キャピュレット家の仮面舞踏会で出会ったロミオとジュリエットは、一目で恋に落ちる。
二人の恋の炎は、互いの素性を知っても消えることなく、バルコニーで愛の言葉を交わすのだった。

ロレンス神父を訪ねたロミオは、ジュリエットと結婚したいと告げる。
ロレンスは結婚を機に両家の争いが収まるならばと、二人を密かに結婚させる
その頃、街ではジュリエットの従兄弟ティボルトと、ロミオの親友マキューシオが友人らを巻き込んで決闘を始める。
駆けつけたロミオの眼の前でマキューシオがティボルトに刺し殺され、逆上したロミオはティボルトを殺してしまう。
従兄弟を殺されても、夫となったロミオを信じるジュリエット。
ベローナの大公エスカラスは両家を喧嘩両成敗としながらも、ロミオにベローナからの追放を言い渡す。

ロレンス神父は折を見て二人の結婚を公表すれば、家同士のわだかまりも解けるだろうとロミオを諭す。
ジュリエットと密かに一夜を明かし、ロミオは街を出る。
キャピュレット家では、パリス伯爵とジュリエットの縁談が強引に進められ、ジュリエットは婚約を余儀なくされる
ジュリエットに相談されたロレンス神父は、ジュリエットが仮死の薬を飲んで一度墓所に入り、人知れずロミオの元へ行くという計画を考える。

計画は実行され、ジュリエットの葬儀が行われる中、ロレンス神父はロミオに計画を教える手紙を出す。
しかし、手紙がロミオの元へ届く前に、ジュリエットの訃報が知らされてしまう
ロミオはジュリエットの眠る墓所へ行き、仮死とは知らずに絶望し自決する。
目覚めたジュリエットはロミオの亡骸を目にし、後を追うのだった。

若き二人を失った両家は嘆き悲しみ、エスカラス大公は皆に罰がくだったのだと一喝する。

一目惚れ至上主義

原作戯曲も読みましたが、ここまで甘々な印象は受けませんでした。読んだ頃に恋でもしていたのでしょうか。
一目惚れを否定はしないものの、全てを投げうって突っ走るには、あまりに根拠がなさすぎます。
仮に結婚できたとして、交際期間ゼロなわけですから、やがて夫婦仲は冷え切りそうです。

結婚生活が破綻するとすれば、原因はロミオの浮気でしょう。
なんせ、ジュリエットと出会うその日まで、彼はロザラインという女性に恋い焦がれて早朝から街はずれを彷徨い歩いていたのです。
それがジュリエットと出会った途端、翌朝にはロレンス神父に対して、ロザラインなんて忘れましたと言ってのけます。
惚れっぽいわけです。
移ろいやすい心の持ち主なのです。
ジュリエットもティーンエイジャー真っ最中のおてんば盛りで、夫の浮気を耐え忍ぶタイプではありません


キリスト教の信者として離婚が難しいなら、家庭内別居のような荒んだ状況になるのが目に見えるようです。
後世に語り継がれる悲恋の二人になれたのは、蜜月のうちに幕を閉じたからだと、この映画からは思わざるをえません。

メインテーマの素晴らしさ

哀愁漂うメインテーマを作曲したのはイタリアのニーノ・ロータです。
音楽一家に生まれたニーノ・ロータは、クラシック音楽の作曲家であり、フェデリコ・フェリーニとのコラボで多数の映画音楽を作曲することになります。
しかし、何と言ってもニーノの名を後世に残したのは、「ゴッドファーザー」のメインテーマである「愛のテーマ(Love Theme From The Godfather)」です。
暴走族が全盛だった頃には、パパラパラパラとホーンで奏でられる「愛のテーマ」は夜を彩る象徴的な音色でした。

「ロミオとジュリエット」のテーマソング「What Is A Youth」は、劇中の仮面舞踏会でも切なげに歌い上げられます。
ハッピーな恋の歌ではなく、悲しい結末を予告するかのようなメロディーは、映画音楽の定番の一つとなりました。

ジュリエット


瑞々しいジュリエットを演じたオリヴィア・ハッセーは、勝気さを秘めつつも恋を夢見る幼さを体現しています。
これまで3回の結婚をしていて、2番目の夫は日本人歌手の布施明です。
その結婚に先立って、小松左京原作による角川映画の超大作「復活の日」に、メインキャストの一人として出演もしています。

若くして当たり役を得た宿命でしょうか、「ロミオとジュリエット」以降も数々の映画に出演しながら、華々しい活躍とはなっていません。
ただ、今現在でも各種作品に出演しているわけで、女優としては十分に成功していると言えるでしょう。

作品情報

原題:ROMEO AND JULIET(1968)
監督:フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli)
出演:レナード・ホワイティング(Leonard Whiting) オリヴィア・ハッセー(Olivia Hussey)

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