「プレデターズ」に挑む戦場のピアニストの勇姿に酔いしれる


かつてシュワルツェネッガーが戦った宇宙の戦士プレデターと再び不条理な戦いを強いられる兵士たちの姿を描いた映画です。劇中でシュワちゃんたちの戦いが言及されるなど、時を超えた正当な続編となっていて、リブートとは一線を画しています。

以下のあらすじには展開の細部も含まれています。公開から時間は経ちますがネタバレしたくない人はご注意ください。

あらすじ

空中を落下していきながら目を覚ました男。無我夢中でパラシュートを開きジャングルに降り立つ。そこには同じくわけのわからぬままに落ちてきた男たちと、一人の女が。ほとんどのものは戦場の兵士たちで、ヤクザや医師も混ざっていた。
本能的に殺し合いを始めようとする中、リーダーシップをとったロイスは争いよりも状況把握を優先させる。自分たちのグループよりも以前にこの地に降り立ったらしい人間の遺体を見つけた一行は、何者かを待ち伏せるための罠を見て、強力な敵の存在を意識する。
ジャングルを抜けたところで空に浮かぶ4つの月を目の当たりにし、ここが地球外であることを悟る。それを証明するかのように現れる凶暴で見たこともない姿の獣に遭遇するも、なんとか撃退、最終的に獣は何かに呼ばれて去っていく。
獣の襲撃中に姿を消したクッチーロを見つけるが、彼は半殺しの目に遭っていた。敵の罠と見抜いたロイスはクッチーロを置いていくことを決め、イザベルはクッチーロを哀れみ止めをさす。

処刑場らしき広場で吊るされているプレデターに近づくと、待ち伏せていた3人のプレデターに狙い撃ちにされる。辛くも逃げ出したところで、長い間プレデターたちと戦ってきたノーランドと出会い、彼の隠れ住む船に案内される。
ノーランドは精神に異常をきたして架空人格を作り上げて会話をしていた。一行はノーランドの策略で追い詰められながら脱出に成功したところで、プレデターの襲撃を受ける。ニコライの自爆による相打ち、ヤクザのハンゾーは皆を逃がしながらプレデターと一騎打ちをする。
最後の一体となったトラッカープレデターを倒すために囚われていたクラシックプレデターを解放するロイス。しかしクラシックプレデターは殺され、宇宙船も爆破されてしまう。
負傷したイザベルを前に殺人鬼の本性を現す医師のエドウィン。その頃ロイスはトラッカープレデターと必死の戦いを繰り広げていた。

長寿シリーズの強みと遊び心

「プレデターズ」が秀逸なのは、そのオープニングにあります。チームリーダーとなるロイス同様、何もわからないままに真っ逆さまに落ちていきながら映画に引き込まれていきます。スタートダッシュで勢いがあるほどに、中弛み感が出てくるのが常ですが、この映画は緊迫感を保ち、緩むことがありません。
プレデターは姿を消すことができるのがポイントで、いつ現れるかわからない、ひょっとしたらもう隣にいるかもしれない、と思わせることが緊張感を生む一助になっているのは確かです。シリーズを通して浸透していった設定を上手く活かしていると言えるでしょう。
また、主要と思われたキャラクターをあっさりと見限ってしまうのも、あくまでもプレデターが主役であると言わんばかりの潔さがあります。圧倒的に確立した個性を持つアイコンが中心にいるので、多少の設定上の甘さは勢いで押し切ってしまおうとするかのようです。
いずれにしても、第1作の公開から四半世紀近くが経っている続編でこれほどの興奮を与えてくれるのに驚きです。

それでも、シリーズ作品の宿命、あるいは諸刃の剣で、惰性とも取れる粗製乱造と呼ばれかねない作品もあったと見る向きもあるでしょう。一方で、プレデターにエイリアンとぶつける「AVP」のアイデアに、ホラー映画における「フレディ vs ジェイソン」に通ずる夢の共演を感じた人もいたのは確かです。
この種の異種間バトルは邦画でも「貞子 vs 伽椰子」に継承されたのが記憶に新しいところです。
近年ではマーベル・コミックの「アベンジャーズ」やDCコミックの「ジャスティス・リーグ」がユニバース展開しているため、クロスオーバー作品として少々霞んでしまっているのが残念です。

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有名映画人による企画

「プレデターズ」にはプロデューサーの一人として、ロバート・ロドリゲスがクレジットされています。「シン・シティ」「フロム・ダスク・ティル・ドーン」「スパイキッズ」などを監督し、クエンティン・タランティーノとのコラボでも知られる人物です。
ロバート・ロドリゲスは1994年に「デスペラード」を監督した頃、この「プレデターズ」のプロットを作りスタジオにプレゼンします。しかし、当時は予算がかかり過ぎるとの理由で却下されてしまいました。それから15年ほどして、このプロットをベースに「プレデターズ」の製作が決定し、ロドリゲスはプロデューサーとして参加したというわけです。
ロドリゲスの構想では、エイリアンとバトルする「AVP」の流れは汲まず、オリジナルの「プレデター」の直系として作られています。プロダクションの小ネタとして、今作でプレデターの操る猟犬の造形が「プレデター2」のラスト近くの宇宙船内のシーンに登場していたものであるなど、旧作のコアなファンも楽しめるものとなっています。

タイトルが「プレデターズ」と複数形になっているのは、プレデターが複数登場することに加えて、人間もまたプレデターであるというダブルミーニングだとのことです。プレデターは略奪者を意味しますが、映画を見るとわかるように、共通の敵であるプレデターが登場しなければ、人間同士で殺し合いを続けたことでしょう。

ハリウッドスターによる脅威の変わり身

映画「プレデター」は1987年の作品で、「コマンドー」「ターミネーター」で注目されていたアーノルド・シュワルツェネッガーが主演でした。第1作からしてすでに、のちにシリーズ化されるのも納得なほどにプレデターは異彩を放っていたとはいえ、主役はシュワちゃんで間違いない作品でした。
「ターミネーター」の方のシリーズで人気を不動のものとしていったシュワルツェネッガーは、カリフォルニア州知事を務めるという誰も予測しなかったであろうキャリアを経て映画界に戻ってきました。

その間に「プレデター」もシリーズが増え、この「プレデターズ」ではエイドリアン・ブロディが主演しています。エイドリアン・ブロディといえば、「戦場のピアニスト」でアカデミー賞主演男優賞に輝き、世界的に名を知られた人です。ピーター・ジャクソンが監督した「キングコング」にも出ていたものの、痩身のピアニストのイメージが抜けません。
彼が「プレデターズ」で荒くれ兵たちのリーダーとなっているのに驚きを禁じえなかったりしますが、ハリウッドスターの一人でオスカー俳優ともなれば、ワークアウトで11kg増量しながらの肉体改造をしてキレッキレの筋肉美を見せてくれます。
耽美的とも称される役から傭兵まで演じきるのですから、さすがです。

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作品情報

原題:PREDATORS(2010)
監督:ニムロッド・アーントル(Nimrod Antal)
出演:エイドリアン・ブロディ(Adrien Brody) アリシー・ブラガ(Alice Braga)

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