シリーズを重ねて奇跡のB級映画へと昇華し続ける「トレマーズ」

カルト的な人気があり、鑑賞者からの評価も高い作品ながら、2作目以降は劇場公開せずにビデオリリースとなっていきます。
確かにB級ではあるものの、トンデモ映画になるかと思いきや意外と続きが気になってしまう作品です。

あらすじはラストまで記してあります。
また、シリーズ展開の概要を含めて基本的にネタバレありです。鑑賞前に知りたくない人はご注意ください。

あらすじ

パーフェクション(完璧/PERFECTION)と名付けられた町は、その名からは程遠く、砂漠地帯の真ん中で西部の開拓時代の状態で取り残された人口わずか14人の町だった。
この先の発展も望めず、夢の見ようもない場所で、アールバルは何でも屋としてゴミ処理や汚水処理を担っていた。
少しだけ変化があるとすれば、郊外に地質学を学ぶ女学生のロンダが調査にやってきていることくらい。
二人は今日もチャンの雑貨屋兼食堂で無為な午後を過ごしていた。

今の暮らしにいい加減うんざりした二人は町を出ようとする。
その途中で、鉄塔に上ったまま脱水死した男を発見する。
自殺にしてはあまりに奇妙な状況に、なぜ鉄塔から降りなかったのか不思議に思うアールとバル。
同じ頃、羊飼いの男や道路工事の男たちが相次いで何かに殺される。

報告のため町に引き返した二人の車には、未知の生物の死骸の一部が引っかかっていた。

ロンダの調査で何かが地中を移動しているらしいことがわかるが正体がつかめない。
キャンピングカーで暮らす老父婦が殺された後、バルたち三人はその生物に追われるものの、地中に設置されたコンクリートブロックに衝突して生物は死亡。
その姿はまるで巨大なミミズのような化け物であった。

怪物はまだ他にも残っていて、追われた三人は大きな岩の上に避難する。
地中を進む怪物は音や振動に敏感で身動きが取れない。
それでも命からがら車に移動して町まで逃げ切る。

しかし、ついにグラボイズと名付けられた怪物が町を襲う。
皆は屋根の上などに避難するが、やはり身動きが取れなくなる。
彼らを助けたのは、町外れに暮らすガンマニアのバート夫妻だった。
皆で協力してブルドーザーに乗り移り、グラボイズの進めない岩山に移動する。

ダイナマイトで一匹を殺すことに成功して残りは一匹となるが、いよいよ打つ手がなくなってしまう。
アールとバル、ロンダの三人は決死の覚悟で走り出し、グラボイズを崖際に誘導して崖下へと落とすことに成功する。

街に平和が戻り、バルとロンダは結ばれるのだった。

カルトヒットへの道

「トレマーズ」は公開当時、決して高い評価を受けたわけではありませんでした。
興行的にも大ヒットとはならずに終わっています。
流れが変わったのはビデオが出てからです。
当時はまだビデオテープが主流の時代だったわけですが、ビデオのセルとレンタルで劇場公開時の三倍もの稼ぎをあげたのでした。
ビデオ市場に需要があるとわかった製作陣はシリーズ化を決めて、映画館ではなくビデオストレートの形態でリリースを開始していきます。

第1作の公開から6年後にパート2を作り、パート3は5年後、パート4は3年後とペースを上げていきます。
パート5は2015年のリリースなので11年の間が開いたものの、再び3年後の2018年には最新作のパート6が製作されました。

実はこのパート6とは別に、同じく2018年にオリジナルをリブートしたテレビ映画の製作がスタートしています。
こちらではついに主演として、バル役のケヴィン・ベーコンが再登場しているものの、残念ながらパイロット版の製作以降はストップしてしまっているようです。
このテレビ映画の監督は「キューブ」で一世を風靡したヴィンチェンゾ・ナタリです。

他にも、2003年にテレビシリーズとしてパート3から派生した、続編的ストーリーが放送されています。

以下、簡単にシリーズのポイントをおさらいしてみましょう。

「トレマーズ2」(TREMORS 2 : AFTERSHOCKS)1996年
グラボイズ退治で富と名声を得たアールだが、これを浪費してしまったところ、メキシコの石油会社からグラボイズ退治の依頼を受ける。
幸先良いスタートもグラボイズの大群に窮地に追い込まれ、アールはかつての仲間で武器のスペシャリストであるバートに助けを求める。
今回の特徴はグラボイズの繁殖形態である子牛大くらいで2足歩行するシュリーカーの登場です。

「トレマーズ3」(TREMORS 3 : BACK TO PERFECTION)2001年
諸国漫遊グラボイズ退治の旅を終えてパーフェクションの町へ戻ってきたバートの前に、またまたグラボイズとシュリーカーが襲いかかる。
彼は故郷の町を救えるのか。
第三作にしてついにグラボイズが、第三形態である空を飛ぶアスブラスターになります。
第一作でバルの発した「飛んでみやがれ」のセリフが回収されたわけです。

「トレマーズ4」(TREMORS 4 : THE LEGEND BEGINS)2004年
1889年、のちにパーフェクションと呼ばれる町、リジェクションは銀鉱山で発展しようとしていた。
しかし、坑内にグラボイズが現れたことで鉱山は廃山の危機に。
オーナーのガマーはグラボイズ退治に乗り出す。
第一作の100年前を舞台にした前日譚で、「バック・トゥ・ザ・フューチャー3」のように西部の開拓時代を描きます。
バートだけでなく、ファンにはおなじみのチャンの店の祖先が中国から移民してくるなど、エピソード0としての楽しみが満載です。

「トレマーズ5」(TREMORS 5 : BLOODLINES)2015年
サバイバリストとして名声を得たバートに、南アフリカの野生保護区に発生したグラボイズ退治の依頼がくる。
グラボイズの起源を辿る旅ともなる今回は、シリーズの総決算とも言えるようなド派手なアクションとコミカルな展開が特徴です。
第一作公開から四半世紀を経ても失速することなく、最新のCGを駆使してモンスターパニックの良作になりました。

「トレマーズ6」(TREMORS : A COLD DAY IN HELL)2018年
グラボイズの毒で死にかけているバートは自らを救うため、前作で和解した息子のトラビスとともにグラボイズとの戦いに挑む。
今回の舞台はカナダで、これまでは砂漠地帯が主だったのに対して、初めて雪原でのバトルが出てきます。
また一作目を踏襲した演出が各所に見られ、特にバルとロンダの娘が登場するのはファンを歓喜させました。

このようにB級でありながらもコアなファンをがっちりと掴む中毒性がトレーマズのシリーズにはあるのです。


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愛すべきマイナーモンスター

「トレマーズ」を楽しがれる人であれば、小さな毛むくじゃら宇宙生物の集団が襲ってくるホラーコメディ「クリッターズ」もおすすめです。
1986年の第一作では農場を襲ったクリッターズが、回を追うごとに都会に進出していき、ロサンゼルスを経て、1992年のパート4ではついに宇宙ステーション内で大暴れします。
グレムリン」にも通ずるところのある、愛嬌満点で凶暴なぬいぐるみ系モンスターなのです。

映画ファンの間ではグラボイズを見て「デューン 砂の惑星」のジャイアント・ワーム(巨大ミミズ)を連想する人も少なくありません。
姿形が酷似しているだけでなく、振動を感じて襲うところや人々が岩場に逃げ込むあたりも共通点があります。
蛇足ながら、「デューン」では歌手のスティングが怪演を見せていることも付け加えておきます。

おまけ

“トレマーズ”は、tremor =振動の意味です。
グラボイズが移動する時の振動と、人々の発する音や振動で襲ってくることから名付けられた秀逸なタイトルです。

タイトルが正式に決定する前、候補に上がったのは「デッド・サイレンス(意訳:死の静寂)」「ビニース・パーフェクション(意訳:パーフェクションの下に)」「ランド・シャークス(意訳:地中のサメ)」でした。

ギターのトレモロアームなど、主に弦楽器で耳にするトレモロという奏法は同じ意味のことで、イタリア語の tremolo からきています。

これから「トレマーズ」を視聴する人は、是非オープニングのロケーションに注目してみてください。
バルが立っている場所がラストシーンへの伏線となっています。

作品情報

原題:TREMORS(1990)
監督:ロン・アンダーウッド(Ron Underwood)
出演:ケヴィン・ベーコン(Kevin Bacon) フレッド・ウォード(Fred Ward)

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