「山猫は眠らない」のモデルになった実在する伝説的スナイパーとは


凄腕のスナイパーであるトーマス・ベケットが中心となるシリーズの第1作は、シリーズ化を決定付けるに相応しい佳作です。一撃必殺のスナイパーを主人公とする映画は意外と多く、戦いの中に静かな緊迫感を生む名作が揃っています。

ストーリーそのものよりも一撃を放つまでの間合いを楽しむような映画でもあり、あらすじにはラストまでの流れを記しています。ネタバレを気にする人はご注意ください。

あらすじ

パナマで暗殺任務に成功した狙撃手のトーマス・ベケットだったが、軍部のミスによって脱出中に相棒を殺されてしまう。同じ頃、パナマでのアルバレス将軍によるクーデター計画を察知した米政府は、資金源となるコロンビアの麻薬組織の長、オチョアと手を組んだアルバレスの暗殺を画策する。
任務を受けたリチャード・ミラーはベケットと組むべくパナマへと向かう。ミラーはオリンピックのメダリストでSWATの経験もある射撃手だが、パナマへの移動中にヘリを襲撃されても敵兵を撃つことができない。しかし、見事に敵兵を殺したと勘違いされ、ミラー自身もそれを否定することはなかった。
ミラーの立てた作戦を無視して独自のルートから敵地を目指すベケットは、現地のゲリラと合流し、まず彼らの敵であるシグハーノを討つことを条件に、反乱軍を指揮するアルバレス将軍の農場にオチョアがやってくる情報を得る。
ミラーにシグハーノの狙撃を命じるベケット。上官は自分だと反発するミラーだがベケットは取り合わない。シグハーノは元CIAのスパイでベケットの顔見知りだった。
シグハーノ狙撃のチャンスが訪れるもミラーは撃つことができず、逆に協力してくれていたゲリラに被害を与えてしまう。怒ったゲリラのリーダーはベケットへの協力を打ち切り、ベケットは情報網を失うことになる。

ジャングルをミラーと行くベケットはAK銃の音を耳にする。AK銃を使っているのはデシルバという昔の相棒で、今は敵の傭兵となっていると告げるベケット。デシルバはベケットの前の相棒を殺した男であり、この時はベケットを追いながらゲリラのリーダーを殺したのだった。
この任務を最後と考えているベケットは、故郷のモンタナに戻って仕事に就きたいと話すが、偶然同じ土地で大学時代を過ごしたミラーはベケットがずっと帰国していないことを見抜き、狙撃手を辞めることはできないと断じる。
ベケットたちの先を行くデシルバに情報源となるはずだった神父を殺されるが、ベケットはアルバレスの農場を目指し、撤退を訴えるミラーも渋々と後に続く。夜、ミラーが寝ているのを囮にしてベケットはデシルバを誘い出し射殺する。

アルバレスの農場に侵入し、それぞれの配置についたベケットとミラーは一昼夜を過ごす。ついにオチョアが現れるが、ベケットはミラーを発見して密かに背後に迫る敵と格闘していて狙撃ができない。そうとは知らないミラーはベケットの狙撃を待つものの狙撃がないことに苛立つ。機会を逃せないとミラーはついに人に向けて銃弾を発射する。
ミラーの銃弾はオチョアを撃ち抜き、農場は混乱し反乱軍が動き出す。それぞれに命からがらで脱出するベケットとミラー。合流直後、再び農場に戻りアルバレス将軍を討つと言うベケットに対して、ミラーはベケットの正気を疑い、ワシントンで密かに下命されていた通りにベケットを殺すことにする。ベケットに照準を合わせるミラーの背後にシグハーノが迫るが、ベケットが気付いて返り討ちにする。
廃墟となった教会で対峙するベケットとミラー。ミラーは初めて人を殺したことで半ば錯乱しているものの、ベケットはその心の痛みを感じられていればまだ大丈夫だと諭す。それは同時に、もはや国には帰れないほどに無感情になっている自分への哀しい告白でもあった。

反乱軍が迫り、ミラーを逃して捕らえられたベケットは拷問を受ける。
宵闇に乗じて戻ったミラーはアルバレスを暗殺し、ベケットを救い出した。米軍の脱出ヘリが到着し、ギリギリのところで窮地を脱するベケットとミラー。二人の間には静かな絆が芽生えていた。

アクションとドラマのバランス

この映画はプロモーションの仕方が米国内と国外とで違っていました。公開当時、米国内では「ターミネータ2」のヒットもあり、アクションシーンを中心とした予告編を作って戦闘を売りとした映画として宣伝しています。
一方で、これは映画を見れば明らかですが、海外での宣伝展開はベケットとミラーとの確執をはじめとした人間ドラマに主眼が置かれています。アクションシーンはスナイパーとしての最低限のもので、ロードムービーのようにジャングルを歩きながら二人の人間性をあぶり出しているのが本作です。
かといって、眠くなるような映画ではありません。相変わらずなぜ付いたかはわかりませんが邦題にあるように眠らないのは観客も同じです。ベケットの緊張感は映画全編を通して途切れることがありません。

シルベスター・スタローン「ランボー」も、一作目はベトナムからの帰還兵の心の傷をベースに話が展開します。田舎町でのゲリラ戦が面白味でありながらも、このランボーの苦悩が映画の成功に寄与したのです。
「ランボー」が続編を重ねたように「山猫は眠らない」もシリーズ化して現在までに7作が制作されている人気シリーズになりました。

主人公のモデル

「山猫は眠らない」はオリジナルストーリーながら、主人公のベケットを演じるにあたってトム・ベレンジャーが参考にした実在のスナイパーが存在します。
アメリカの海兵隊で狙撃手としてベトナム戦争に参加したカルロス・ハスコックがそのモデルです。

ハスコックはまさに伝説的なスナイパーで、2000m以上離れた距離での狙撃に成功したり、孤軍奮闘で敵軍を足留めるなどしました。しかし、多くは機密扱いの暗殺作戦であったこともあり、実際のスコアは明らかになっていません。
ハスコックが敵から悪魔的と恐れられたのは、一つにはそのシンボルにあります。彼は帽子に白い鳥の羽を一枚つけていたことから、ホワイトフェザーウォーリアー、白い羽の戦士として知られていました。
羽のイメージだけでなく、実際の腕も並外れていて、「One shot, one kill.」つまり一撃必殺を信条としていました。あまりの凄腕から作られた伝説だと疑う人も少なくなく、近年でもテレビ番組で検証がおこなわれています。
この検証されたという狙撃が、今日に至るまでスナイパーのイメージを決定付けることになったもので、ライフルのスコープを覗く敵に対して、そのスコープを貫通させて目から脳まで銃弾を撃ち込むというものです。
映画のミラーのようにハスコックに同行していた観測手のジョン・ローランド・バークが残した記録写真などから検証されたところによれば、コブラというコードネームで呼ばれていた北ベトナム軍の狙撃手と互いにスコープ越しに相手を捉えている相討ち覚悟の状況下で、間一髪ハスコックの放った弾が前述のようにスコープ越しにコブラの脳に当たったのです。
敵スナイパーのスコープがキラリと光って存在に気付くシーンが映画には数多あります。ハスコックは実際にその状況から返り討ちに成功したことになります。

今作ではベケットとデシルバの戦いにこのハスコックのエピソードが垣間見られます。

映画の中のスナイパーたち

ある程度の距離をとっておこなう狙撃による暗殺は、ハンドガンやナイフなどの暗殺と違って直接の戦闘状態にはなりづらいのが特徴です。ただし、距離があれば狙いを外す可能性も出てくるリスクを抱えています。とはいえ、そこは映画の中でのこと、主人公ともなれば一撃必殺の銃弾を放つことができます。
何れにしても作戦の性質上、表舞台に名が挙がることはほとんどありません。そんなスナイパーたちを直接的にあるいは実話をベースにしてフィクションとして描いた作品はいくつかあります。
数例を挙げてみます。

スターリングラード(原題:ENEMY AT THE GATES / 2001)
実際にあった第二次世界大戦におけるスターリングラード攻防戦で、やはり実在の狙撃手であるヴァシリ・ザイツェフを主人公にした映画ですが、ストーリー自体はフィクションです。
監督:ジャン=ジャック・アノー 主演:ジュード・ロウ

ザ・シューター/極大射程(原題:SHOOTER / 2007)
スティーブン・ハンターの小説を原作としたフィクションで、凄腕を利用されて暗殺犯に仕立てられた元海兵隊のスナイパーが真相を探り復讐に乗り出します。
監督:アントワーン・フークア 主演:マーク・ウォールバーグ

アメリカン・スナイパー(原題:AMERICAN SNIPER / 2014)
実在し、伝説とも悪魔とも呼ばれたイラク戦争時のネイビー・シールズの狙撃手クリス・カイルの話で、本人同様に従軍でPTSDになった男によって射殺されたことから話題になり映画化されました。
監督:クリント・イーストウッド 主演:ブラッドリー・クーパー

ジャッカルの日(原題:THE DAY OF THE JACKAL / 1973)
フランス大統領の暗殺を目論むジャッカルと呼ばれる暗殺者を主人公とした映画です。フィクション小説が原作ですが、実際に何人ものテロリストや暗殺者が愛読していたことが知られています。
純粋なスナイパーではないものの、特殊なライフルを組み立てて大統領を狙います。のちにブルース・ウィリス主演でリメイクされています。
監督:フレッド・ジンネマン 主演:エドワード・フォックス

作品情報

原題:SNIPER(1993)
監督:ルイス・ルローサ(Luis Llosa)
出演:トム・ベレンジャー(Tom Berenger) ビリー・ゼイン(Billy Zane)


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